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「町内会役員を賃借人も含めた輪番制で選出する」という議案は有効か?

管理組合の総会で「町内会役員を賃借人も含めた輪番制で選出する」という議案は有効なのでしょうか?

区分所有法第3条によれば、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設(以下「建物等」という)の管理を行うための団体を構成し」、そのために「集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」と規定し、この規定に基づいて設立される団体が管理組合です。
 それゆえ、管理組合は、区分所有者が共有する「建物等」を管理(維持及び保全)することを目的としています。
 これに対して、自治会や町内会は、良好な地域社会の形成、維持のために地域的な共同活動を行うために設立される団体であり、地域のコミュニティー作りを目的とし(地方自治法第260条の2・第2項第1号)、管理組合の目的とは異なります。
 また、管理組合と自治会や町内会との団体の構成員のあり方をみると、管理組合は区分所有者全員が当然に加入するのに対して、自治会や町内会は任意に加入して構成員となり、また脱退することも自由です。
 それゆえ、管理組合と自治会や町内会とは、地域や地区を重複する場合がありますが、その目的や構成員のあり方が異なることをよく理解しなければなりません。
 さらに、区分所有法第46条第2項によれば、占有者(賃借人など)の義務として、「占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う」と規定され、「建物等」の使用方法については、管理組合の決議があれば、賃借人もこれに従う義務を負うことになります。
 そうすると、本問は、町内会役員を決める議案が「建物等」の管理およびその使用方法に関係する議案であるか否かが問題となります。
 そして、管理組合と町内会の目的と構成のあり方の相違からして、町内会役員の議案が「建物等」の管理、使用方法に関係するとはいえず、管理組合の決議事項にあたらないと解されます。
 したがって、この議案が賛成多数で可決されたとしても、賃借人に町内会役員としての義務を負わせられず、本問の議案の議決は効力を有しないことになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2004年6月掲載

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