当マンションには、管理規約で特定の住戸に特定の駐車場区画の使用権が付属している、”専用使用権付き駐車場“と、管理組合と区分所有者が都度使用契約を交わす”契約駐車場“が設定されています。専用使用権付き駐車場の使用料が契約駐車場の使用料と比較すると極端に安価であったため、理事会では専用使用権付き駐車場の使用料増額に向けて管理規約変更の検討を進めています。しかし、専用使用権付き駐車場の利用者が増額に反対しており、管理規約の「規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」の条項を根拠に、自分たちの承諾が無ければ管理規約の変更はできないと主張しています。この場合、反対する一部の組合員の承諾を得ずに管理規約を変更することはできないのでしょうか。なお、当マンションの管理規約は標準管理規約に準じています。
マンション分譲当時の近隣相場及び現在の近隣相場や、契約駐車場の使用料等に鑑み、増額された駐車場使用料が社会通念上相当な額であれば、反対する一部の組合員の承諾を得ずとも、総会で管理規約変更が承認されれば、駐車場使用料を増額することは可能と考えられます。
区分所有法第31条第1項では、「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と定められています。
判例(最高裁 平成10年10月30日)によれば、「特別の影響」とは「規約の設定、変更等の必要性及び合理性と、これによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らし合わせて、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうもの」と解しています。
また、標準管理規約第47条(総会の会議及び議事)第7項においても「規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない」として、正当な理由を持たない組合員については、その承諾は不要とされています。
例えば、契約駐車場使用料が月額8000円であり、近隣相場も同程度で、専用使用権付き駐車場使用料のみが著しく安価に設定されているのであれば、月額8000円を目安に専用使用権付き駐車場使用料を増額することは、「特別の影響」を及ぼすべきものではなく、当該組合員の「承諾」は不要と考えてよいでしょう。
編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2018年4月掲載