マンション管理に関する法律トラブル相談室その他


部屋を売却した人からの会計帳簿の閲覧請求に応じる義務があるか

理事長をしています。部屋を売却し退去された方から「納入した管理費等の使い方で気になることがあるので組合会計帳簿を見せてほしい」との連絡がありました。組合会計帳簿を見せなければならないでしょうか?なお、マンションの管理規約はマンション標準管理規約に準じた内容となっています。

 マンション標準管理規約の第64条では「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。」と記載されていますが、本件においては退去した方が「利害関係人」であるかが問題となります。
 平成15年5月21日の東京地裁判例によれば、会計帳簿を「閲覧の対象となる会計帳簿等の書類には控訴人(管理組合)の団体としての信用に係る具体的情報のみならず組合員各人のプライバシーその他の個人情報が載っているもの」であり、「相当な理由が明示されない閲覧請求は理事長において拒絶し得るもの」としています。
 また、そのような会計帳簿を閲覧できる「利害関係人」とは現在の区分所有者(組合員)以外に例えば「区分所有者からその専有部分の貸与を受け、管理組合にその旨の届出があった者又はその同居人、管理組合との間で組合管理部分について貸与、管理受託その他の契約関係を有するもの等でその地位と当該閲覧請求との間に法律上の関連性が認められる者」としています。
 売却により退去し、マンション管理組合の組合員の資格を喪失した方については上記の「利害関係人」にはあたらないと考えられるので、会計書類を開示する必要はないでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2018年3月掲載

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