携帯電話基地局をマンション共用部分である屋上に設置する行為は、「共用部分の変更」に当たります。
区分所有法では、「共用部分の変更」は原則として、区分所有者および議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議(特別決議)としていますが、例外的に、共用部分の形状または効用の著しい変更を伴わない場合においては、区分所有者および議決権の各過半数による集会の決議(普通決議)と定めています。
区分所有法〈抜粋〉
(共用部分の変更)
第一七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
(共用部分の管理)
第一八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。
お問い合わせのケースでは、分譲マンションの屋上に携帯電話基地局を設置することが、共用部分の形状または効用の著しい変更を伴うことなのか、また、専有部分の使用に特別の影響を与えることなのかが問題となります。
一般的には基地局を設置したとしても建物の外観に著しい影響を与えているとはいえず、過去の判例でも、『基地局の設置は屋上の形状や効用に著しい変更が生じるとはいえず、また専有部分に特別な影響を与える事実はないとし、共用部分の管理に関する事項として普通決議で足りる。』との判断が下されたものがあります(平成二一年二月二八日 札幌高裁)。
しかし、設置される基地局の荷重によっては、建物の構造に悪影響を与える可能性もありますので、事前に専門家に相談し、建物の構造上問題ないことを確認した上で総会の議案とするのがよいでしょう。
編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2012年5月掲載