区分所有法(第一九条)では、原則として、マンションの管理費等は、区分所有者が納めるように定めています。
事業主が未販売住戸の区分所有者であることから、未販売住戸分の管理費等は、他の区分所有者と同様に、事業主が管理組合に納めなければなりません。
しかしながら、マンションは販売開始と同時に完売するものばかりではないために、マンションの販売の際に、事業主が各区分所有者との間で、「第一期の管理費の収支が赤字の場合、赤字分の金額を上限に事業主が填補する」という覚書を取り交わすことがあります。
本問もそのような事例ですが、そもそも事業主が、このような覚書を管理組合に対して、法的効力を有するといえるかが問題ではありますが、通常は、管理組合の設立に際して、この覚書の追認がされるのが普通ですし、仮に、追認がない場合にも、期末に、管理組合の管理費の収支に赤字が出れば、事業主がその赤字分を填補した決算が承認されるのが普通です。
しかし、第一期の期中に破産してしまった場合、管理組合の管理費の赤字分の填補がされることはないのが普通ですし、管理組合が事業主の填補金を免除することを決議することもないので、結局、覚書が解除され、管理組合は事業主に対して、未販売住戸の管理費全額を請求することになります。
そして、破産宣告前の管理費は破産債権となり、破産宣告後の管理費は財団債権(破産手続きとは別に、随時、破産する会社が持っている財産(破産財団)から債務の弁済を受けることができる権利)になると考えます。
ところで、一般的に、未販売住戸は、破産管財人による売却や競売によって新たな区分所有者のものになりますので、区分所有法第八条(特定承継人の責任)によって、新たな区分所有者が旧所有者である事業主の管理費の未払金を支払うことになります。
ただし、稀有なケースと思われますが、管理費の収支が黒字の場合は補填の必要がありませんし、管理組合の設立前の倒産の場合は、破産財団から赤字部分を先取特権として回収されない限り、その補填を受けられないことになります。
編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2008年12月掲載