私は理事をしています。先日の理事会で理事長から修繕積立金の運用に関して、定期預金を解約して株式に投資しようという提案がありました。もし株価が暴落して被害を被った場合、理事として私も責任を負うのでしょうか。
区分所有者は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体(これが管理組合です)を構成し(区分所有法第三条)、その総会決議によって管理者を選任することになりますが、通常は管理規約によって、管理組合の役員として数名の理事を選出し、理事長はその中から選ぶことになります。
このようにして選出された理事長および理事は、善良な管理者の注意義務(一般的に善管注意義務といいます)をもって委任事務を処理することになります。
従って、選ばれた理事長はもちろんのこと理事もその義務に違反して管理組合に損害を与えたときは、損害賠償責任を負うことになります。
さて、本問の回答ですが、先に述べたように、理事の業務は建物などの管理義務を行うことにありますから、修繕積立金を有利に運用して利益を上げることではありません。それゆえ、暴落の危険がある株式に投資すること自体、基本的には適正な管理業務といえません。また、通常、管理規約によれば、総会の決議事項において「その他組合の業務に関する重要事項(組合員の共同の利益に関わる事項)」をあげていますので、総会で修繕積立金の株式投資での運用を決議して行うことも考えられますが、株式投資での運用自体が適正な管理業務に違反すると解され、善管注意義務に違反して損害を与えたとして、のちに理事の責任を追及する総会決議がなされることも予想され、高騰するという確実な情報(このような情報は違法な情報以外にない)があっても、理事としては修繕積立金の株式投資での運用は避けるべきですし、せいぜい元本割れが生じない運用にかぎるのがよいでしょう。株価が暴落した場合は、株式投資に関わった理事は責任を追及される場合があるでしょう。
編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2001年1月掲載