マンション建築時に、事業主と近隣住民とで結ばれた電波障害についての協定(共同受信施設の設置は事業主の方で行い、その維持管理費用も全て負担するというもの)が、その後管理組合に引き継ぎされて数年間組合費から支出してきました。もしできれば協定自体を白紙に戻したいのですが、どのような問題が生じるでしょうか。
近年、テレビは家庭生活の一部となっているので、その映像を支障なく視聴できるということについては、日照権などと同様に法的保護の対象となるでしょう。地方公共団体によっては、マンションなど高層ビル建築許可の条件として、条例または指導要網などにより、受信障害に係る建築主の責務、紛争の事前解決をうたっているものも見られます。
さて、問いのケースですが、共同受信施設の設置に関して協定を既に締結していて、その後その協定を管理組合が一方的に破棄した場合は、約束違反=債務の不履行となり損害賠償を近隣住民から求められることになります。その場合の損害額は、電波障害を防止する施設の設置および管理費用などが考えられます。また、破棄しないまでも維持管理費用を近隣住民にも分担してもらおうとする場合には、当事者間で協議して合意する必要があります。
なお、協定書の有効期限については、共同受信施設が存在する間となり、台風などにより施設が倒壊した場合には新たに協定を結ぶ必要があるでしょう。その場合は、費用の分担も新たに定めることができることになります。
編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
1993年4月掲載