私が住むマンションは自治会に団体加入していますが、先日新聞記事で、自治会退会後の自治会費の返還をめぐる裁判があり、返還すべきと主張していた区分所有者が勝訴したという記事を読みました。
自治会への団体加入についてどのように考えれば良いのでしょうか。
管理組合は、建物や住宅の性能の長期的な管理・保存を唯一の目的とする区分所有者全員で構成する機関です。自治会のような親睦等を目的とした団体とは別の機関です。そのため、区分所有者は、管理組合と違って、自治会へ加入する義務はありません。
先日の東京高裁での裁判例は、自治会に管理組合が団体として加入し、管理費から自治会費をまとめて支出していたところ、ある区分所有者が自治会を退会したにもかかわらず、自治会費相当額が管理費として徴収され続けていることが不当であるとの訴えを起こし、①団体加入を定めた管理規約と総会決議の有効性と、②自治会費相当額の管理組合の不当利得の是非が争点となった裁判例です。
まず①について、管理組合と自治会の構成員が実質的に一致しており、管理組合が区分所有者から管理費に含めて自治会費を集める代行徴収自体は違法ではない、つまり団体加入を定めた管理規約と総会決議は有効であると判断しました。しかし、自治会費と管理費とを区分経理することなく徴収していることや、自治会の支出費用の大半が納涼祭などのイベント活動費に充てられているために管理組合の目的の範囲を超える疑いがあるとの指摘もしています。
次に②について、退会後も自治会費相当額を徴収することが実質的に自治会からの退会の自由を制限することになり、退会後に区分所有者が支払った自治会費相当額は「管理組合の不当利得」と認定され、区分所有者への返還を命じる判決となりました。
以上により、自治会活動が有益なことでもあり、自治会への団体加入の必要性も認められますが、加入するか否かは居住者の任意ですので、管理組合は、自治会への一括団体加入を避けるべきと考えます。
また、既に、毎年継続的に自治会へ一括団体加入して自治会費を管理費から一括支払いしている場合、今後の手続きとしては、居住者の任意加入とし、個別に自治会費を支払うようにすることをお勧めします。
編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2023年8月掲載マンション管理、ビル・施設管理、
修繕改修工事や設備工事、ビルメンテナンスのお悩みごとなど。